幻人形/within
 
死んじゃったの? 」
「そうだよ」と母さんは表情を変えずに言った。
「母さんは悲しくないの? 」
「悲しくても涙が出るとは限らないだろう」
 家に着くとわたしをテーブルの上に置き、動かなくなった父さんの前で跪き、手を合わせて何かに祈っていた。
 しばらくすると母さんは立ち上がり、奥へ行ったかと思うと、シャベルを持って現れ、わたしを脇に抱え外に出た。
「元気だった父さんが死んで、頭だけのあんたが生きている。そんなのおかしいわ」
 母さんはシャベルとわたしを抱えて小高い丘へと登った。その姿はライフル銃を持った兵士のようだった。
「可哀想だけどあんたとこれ以上暮らしていくのは無理なのさ」
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