幻人形/within
 
さ」
と母さんは丘の上に着くとシャベルで穴を掘り始めた。無言で黙々と掘り続け、ちょうどわたしの頭ひとつが入りそうな大きさの穴ができた。そこにわたしを仰向けに収めた。
「いやよ、いや。ひとりにしないで」
しかし、わたしの訴えに耳を貸さず、母さんは黙って土中にわたしを埋めた。
そうして、夏が終わり秋が訪れ、冬に沈み、また春が昇る頃、わたしの内から青い欲望の芽が生え、殻を突き破り、或る晴れた日に土中より息吹を上げ、その芽は次第に大きくなり、茎が伸び葉を広げ、蕾をつけた。
わたしは少年を導いた。茎が地を這うように伸び繁り、花が咲き誇り、淡い桃色の花弁の中にわたしは顔を現し、その祝福の中に少年は訪
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