幻人形/within
かないからあげちゃった」
「何を言ってるんだい。代わりはないんだよ。母さんは知らないよ」
「いいのよ、わたしが望んだことだから」
わたしは微笑んで応えた。それなのに母さんは口を曲げたままで、つまらないので港を離れ、岸に座り、生温い風に吹かれながらウミネコが空をくるくる舞い踊っているのを追いかけていた。そのとき、首が攣ったかと思うと、頭がぽとりと地面に落ちた。
「嗚呼、母さん、母さん」
と、わたしは大声で叫んだ。しかし叫ぼうが泣こうが誰も現れず、首のない身体と、熟れ過ぎた果実のように落ちてしまった頭が、誰に顧みられることもなく転がっていた。一ミリ一ミリと日が陰っていく中で、わたしはひとり
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