幻人形/within
とりでいることに慣れているはずなのに、淋しさに耐えられなくなり、滂沱の涙が垂れ落ちた。
誰にも見つけてもらえず夜が来て、冷たい潮風が吹きつけてきて随分不安な気持ちになったが、誰も来てくれない。こんなところに来た自分が愚かだった、と後悔した。何故わたしはこんなに脆いのだろう。皆、もうわたしのことなぞ忘れてしまったのだろう。「あんたは私の子じゃないんだよ」そんなことを言われたこともあった。だからわたしがいなくなっても気にも留めてないに違いない。でも慰めの玩具であるよりは、ずっとマシだった。
そのとき、暗闇の中から狼煙が立ち上るように光が現れ、こちらを照らした。
「こんなところにいたのかい」
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