幻人形/within
 
の腕を川の水に浸し、白い肌を清めるようにゆっくりとさすった。この腕を抱きしめているとこの腕の向こう側にいる少女の姿が思い返され、心の中にロウソクの灯火のような募る思いが現れるのを感じた。
片腕になったわたしは、母の働く漁港まで裸足のまま歩いていった。漁港に着くと、漁から帰ってきた船の傍らで、魚のはらわたを包丁で器用にえぐり取っている母さんがいた。女達は輪になって、黙々と作業をこなしていた。わたしが近付いても気付かない様子で、母さん、と声を掛けると顔だけこちらに向け、頭頂からつま先まで値踏みするように見、あんた、腕、どうしたん? と、しわがれた声で尋ねた。
「外れちゃったの。どうしてもくっつかな
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