幻人形/within
動く腕を手に入れたような気がしていた。
少年はまだ温かい腕で自分の頬を撫でつけ、きめの細かな少女の皮膚に心を奪われ、恍惚としていた。少女の指を解すようにひと指ひと指開いていき、自らの顔を埋めると、身体が少女の掌よりも熱くなるのを感じた。そのとき、人の声がし、少年は慌てて腕を抱きしめ、駆け出した、が、ばったり老婆に出会い
「おまいさん、何持っとるのや」
と皺に埋もれた濁った眼で睨まれた。
「うるさい、黙れ」
そう言って老婆の肩を突き飛ばすと、老婆は尻もちをつき、痛い、痛い、と大声でわめきだし、少年はただひたすら見えなくなるまで走った。
川のほとりまで辿り着くと腰を下ろし、少年は少女の腕
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)