幻人形/within
のこの腕、差し上げるわ、と申し出た。いいの? と少年は問い返したが、いいのよ、でもそれはわたしなのだから大切にしてね、と微笑んだ。少年はまだ血の通っているらしきわたしの片腕を大事そうに抱え、雨の止んだ空を見上げ、
「晴れ間が出てくると、きっと虹が見られるよ」
と言ってまだ首の座らない赤子を抱くように大事そうにわたしの腕を抱え、小走りに去っていった。片腕を失ってもわたしは全く悲しくなかった。かえってこの方が身軽だった。いいのよ、これで、何か上空を旋回する鳶のような身軽さを得られたような清々しさに包まれていた。
次第に晴れ間が覗いてきた。わたしは今まで腕があったときよりもずっと思い通りに動く
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