幻人形/within
。ハンカチで、絵の具が溶けたようなずぶ濡れの顔を拭うと、幾分か周りの風景が見えてきた。
「ここから僕の家は近いんだ」
そう言って少年はわたしの手をとり、走り出そうとした。でもわたしがまごついていると、少年があんまり強く腕を引っ張るもんだから
「痛い」
と言ったがぽろりとわたしの腕がもげてしまった。
少年が、ああ、どうしよう、と蒼白な顔でおろおろするので、わたしが、気にしなくてもいいのよ、となだめ、
「貸して」
と少年からもげてしまった腕を受け取り、肩にはめようとしたのだが、外れてしまった具合がよくないらしく、うまく繋げることができなかった。わたしは少年に、よかったら、わたしのこ
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