東京少年 「国立」/虹村 凌
いた。
どうやら、彼女は我が学園の女子校の生徒らしく、相当可愛いんだそうだ。どんな女の子か、イラストにしてくれと言うと、川村は嬉しそうに書き上げた。出来上がった絵を見て、その彼女を知っている友人らは、
「それは可愛く書きすぎだ」
などと言ってキャッキャとはしゃいでいた。名前は、「荒巻 恵美」と言うらしい。俺はそれを横目で見て、自分にはあまり関係の無い事だと思い、さっさと席について、ノートと教科書を広げると、あまり興味が無いその会話に、何も考えずに適当な相槌を打っていた。
それからしばらく経ったある日、何時も通り授業の空き時間を持て余した俺は、開いたばかりの誰もいない学生食堂で
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