粘膜の輝き/花形新次
 
年の頃はよく見たさ。
きれい?
ああ、すごくきれいだよ。
どんなふうに?
柔らかな粘膜がね、ジワーッと濡れてきて、テラテラ光るんだ。
そしてその光がふわりふわりとあっちへ行ったりそっちへ行ったりしてね。
この世のものとは思えないほどすごくきれいで不思議な光だった。
そして、それを捕まえようと追いかけるんだけれど、なかなか捕まらないんだ。
それが口惜しくてね。
花火よりきれい?
あんなに派手ではないけどね。
でも、きれい?
ああ、きれいさ。
見たいなあ、僕。
まあ、焦らないことさ、きっと見られるから。

結局その日は<粘膜の輝き>は見られなかった。
僕と父さんは、蚊
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