紫陽花/shu
深緑の木々が息をしているように、その存在の輪郭を露わにしている。
寺の背後のこんもりとした黒い森からはアオバズクの声がする。
「あじさいってのは七変化って言ってな。アントシアニンや土壌のpH(酸性度)によって
色が変わるんだ。土壌が酸性ならば青、アルカリ性ならば赤、と言われてる」
そんな含蓄を垂れる私をよそにゆめこはさっさと服を脱いで、月明かりの下に立つ。
「じゃあ、このお寺の土は酸性ね。お骨が埋まっているせいかしら」
青紫にその身を染める紫陽花の傍らに、ゆめこの白い肢体が寄り添う。
肌がほんのり月明かりに滲んでいるように見えるのはファインダーのせいな
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)