東京少年 「新宿」/虹村 凌
 
飛び散って、すえた匂いが立ち上ってきた。
 吐いたら負けだ、と思っていたが、どうにも耐えられなかった。




 また朝が来た。来て欲しくも無い朝が来た。何の変哲も無い朝を憎む人間はあまりいないだろう。ましてや祝日の朝だ。殆どの人は喜ぶ筈であるが、俺だけは、この朝が呪わしく、憎かった。俺は「朝が来た」と言う現実を、嫌々ながら受け入れた。文字通り、枕に張り付いた顔を引き剥がし、タオルケットを跳ね除けた。ヒリヒリする顔を指で触ると、ベタベタしたものが付着していた。
 どんなに願っても、明けない夜は無い。眠ったまま、朝なんか来なければいいと思うが、矢張り、朝は来る。痛く、苦しい事しか
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