一葉の札/光井 新
かしそれは微々たる額で、親戚からしてみれば、販売店なんかで買うよりもずっと安い。商品に見合った、自分達の仕事に見合ったものなのだ。
この五千円は、私達家族が生きていく上で必要ではないもの。この五千円は、親戚からではなく、世間から、社会から稼いだもの。その事は、もう夏だというのに今もこうして咳き込みながら、畑で汗を流す妻の姿を、ただただ眺める事しかできない私にとっては、とても価値のある事なのだ。
嗚呼、その価値に見合った、価値のある使い方を。
私達家族は、この五千円が無くても、ちゃんと生きていけるのだから。誰か困っている人がいれば、その人のために。
それが私の、もう一つの、農民とは別
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