一葉の札/光井 新
 
は別の、真新しい誇り。}
 こんなくだらない作り話を、ブサイクなキャバ嬢達に聴かせて、高くて不味い酒を飲みながら、誇りも何もあったものではない、価値のない一時間に五千円を使ってしまおうか?
 文学キャバ嬢は、きっとしらける事であろう。
 私はきっと、恥を捨てて、文盲キャバ嬢とメールアドレスを交換しようとするに違いない。
 今夜は浴衣ナイトだからと、では私も、と浴衣のまま雪駄を履いて家を出た。浴衣で街を歩いていたら、人の視線が気になるからか、いつもは気にもとめないような事が、何故だか気になって仕方がなかった。目に入った高級果物店で、立派な桐の箱に入った桜桃が気になった。値札には、五千円と書いてあった。
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