初恋。思い出と呼ぶにはあまりに拙い後悔/ふくだわらまんじゅうろう
も甘美な
甘美な御伽噺であってくれたなら
ぼくは何の悔いもなく
西の空に輝くあのひとつ星をいつまでも
いつまでも
そして
どこまでも
追いかけてゆけるというのに
なのに、ああ、あの頃の
あの
初恋よ
憐れなこの男の腿の番に蔦を絡めて
甘美な煉獄の城に繋ぎとめようというのか
そしていまだにこの僕は
どんなに間違った酒に酔ったとしても
忘れえないのだ
あの艶やかな頬の張りと
無邪気な渾名で呼び古された
体操着の背番号と
あまりにも幼き青春の跳躍を
春よ
春よ
おお、春よ!
おまえは、どうか、ぼくを苦しめつづけておくれ
柔らかな、取るに足らないその蔓
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