嬢とジョーと時々モヒカン/影山影司
 
コロコロと物陰へ縺れ込んだ。ゴツン、と音がすると、親猫は頭を上げて、耳を巡らせる。「危ないでしょー」とでも言うのか、一声ナーオ、と鳴くと、物陰から二匹は顔を出して、また追いかけっこを始めた。
「この雌猫め。そんなに子供達が心配か、ヒヒヒ」
 そろそろ子猫を撫でたくなってきたので、親猫を持ち上げて、子猫達の方へ歩み寄る。「オラオラ、逃げたらテメェらの母ちゃんがどうなるか分ってんだろうなァー!」と、親猫を掲げてみたが、やはり畜生は畜生。知恵の回らぬ子供達は母のことなど歯牙にもかけず、壁の隙間に身を滑らせて隠れてしまう。

 この時点で、五分ほど経っているだろう。時間は深夜。地面にうずくまってう
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