嬢とジョーと時々モヒカン/影山影司
る。かつて持ち合わせていた警戒心を、長年の安寧によってすっかり失ってしまった親猫よ。そうだらしなく地面に垂れないでくれ。道路にできた瘤のように、親猫はアスファルト色の体を地面に密着させて僕の手に体をゆだねるのである。時折空いているほうの手で、喉を撫でてやればもう彼女は僕の虜だ。彼女の子供達は「これはいかなことか。ゆゆしきじたいなりや」といった表情で、先程の水路の穴からもぐらみたいに顔だけ出してこちらを伺う。
「おまえの母親は良い女だったぜウヒャヒャヒャー」(一応腹部を撫でてカリカリの乳首を発見した)とにこやかに笑いかけるが、やはり野生の本能が強く残っているのか、子供達はよってこない。僕はそれまで
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