愛/ケンディ
 
少年期の私は怖がりでした。
マンションの9階にある3つの部屋を全て
借り切っていました。離れの部屋に
寝室がありました。離れの部屋は
ほとんど誰も使わないのに、
無駄に広く、暗く、怖かった。
今でも当時の絶望の体験が
夢の中で再生されます。
夜、離れの部屋に行きました。
その部屋に行くのはとても怖かったですが、
ベッドには母親が寝ているものだと
思い込んでおり、ベッドにたどり着くまでの
辛抱だと思っていました。私は
寝室に入りました。布団は人が入っているような
ふくらみをしていました。そこに母親が
寝ているにちがいないと期待しました。
私はベッドに飛び乗りましたが、
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