「海が見える丘」:童話/月乃助
。
お母さんは、じっと陽の中で黙っています。
「お母さんね、きっと、今日を忘れない。今日のこの日、この丘できみといっしょに海峡を、山を、空を、陽の光を、たくさんの水仙を、見たことを。そのすべてが、輝き、完全で、きれいだもの」
「…きれいだもの」
お母さんは、笑っています。とても、幸せそう。
「きみは、お母さんがすきですか?」
へんなことをお母さんは、時々聞きます。
「すき」
きまってるのに。ハンバーグくらいすき。たんじょう日くらいすき。
「それじゃ、お母さんの腕がなくてもすきですか?」
「腕がない。お母さんの腕がなくなるの?」
「そう、もしなくなっても、まだ、すき?
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