「海が見える丘」:童話/月乃助
き?」
少し考えて見ます。それって、どんな姿かって、でも、なにか欲しかったらとりに行ってあげられる、だから、
「やっぱり、すき」
「じゃあ、足がなくても、すき?」
「足がなくても、きっと、すき」
手をかして歩いてあげる。お母さんは、こんどはじっと海峡を見つめて聞きました。
「じゃあ、お母さんの髪がなくても、すき?」
髪がなくなるって、そう、おじいちゃんみたいな丸いあたまになるの。う〜ん。
「それでも、すき」
お母さんは、お母さんだもの。
「そっか。ありがとう。うれしいよ」、そう言って、お母さんは、また海峡を見つめていました。
ひんやりとする潮風がふいてきて、それに、散った桜の花がどこかからやってきます。
お母さんは、その桜の中で、ひどく苦しそうなせきを何度もしました。
丸く、くじらの背のようにそれをまるめながら。
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