静かなる夕暮れの道・ルオー展にて〜町田探訪記〜 /服部 剛
 
描き続けました。初めてルオーの作品が大きな美術館に飾られ、世間に認められたのは60歳の頃で、それまでの長い間、苦労していたルオーですが、1958年にパリで86歳の生涯を閉じると、フランスの国葬で多くの人々に見送られる、国を代表する画家となりました。 

 僕は静けさの漂う館内で、時折休憩室の椅子に腰掛けて、外の公園の森の緑が風に膨らみながら身を揺すっているのを時折眺めながら、持参した文庫本を開いて、遠藤周作がルオーについて書いたエッセイを読んでいました。その文を読んで本を閉じてから、実際にルオーの絵を見ると、額縁の中の夕暮れの道を歩く寂しい道を、密かに隣で共に歩いてくれている風の人のような存在
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