静かなる夕暮れの道・ルオー展にて〜町田探訪記〜 /服部 剛
 
存在を感じ、人生は時に哀しくとも、それを静かに受け入れながら、歩み続けてゆくような、聖なる夕暮れの道に、自分も歩いているような、歩いてゆけるような、不思議な気持になる夢の情景が、目の前の小さな額縁の中に広がっていました。 

 ルオーの絵との対話をしている内に3時間以上の時は過ぎ、閉館の5時半になりました。僕は購入した図録を手に、美術館の外の公園を歩き、山の中の階段を上って少しの間、散策しながら、森の木々の無数の葉の隙間から、夕暮れ前の太陽の光が見え、人気少ない森の中を歩いていると、人間の心の内部の世界を歩いているような気がしました。 

 行きに通った同じ道に戻り、町田文学館の近くにある「町田屋」という豚骨ラーメン屋があり、その店も僕が時々町田に行くと立ち寄る店で、カウンターにゆっくりと腰を下ろした僕は、少し早い夕食が運ばれるのを静かに待ちました。ルオーの絵の中の優しい夕暮れの道を、脳裏に思い浮かべながら。 







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