愛の詩人・上手宰と「冊」の詩人からの伝言/服部 剛
 
思う。 


  濡れてもよかった
  首筋から雨を流し
  心臓から雨を流し
  雨のなか雨そのものとなって
  ひとを濡らしてさえいた
  それでもわたしが
  わたしたちが
  願うことを捨てなかったのは
  明日歩きはじめるものの靴を
  濡らしたくはなかったからだ

  聞こえる
  雨音に足音を聞いて立ち止まる
  すると再び
  あたりは激しい雨音だけに包まれる
  だがわたしは知っている
  雨音は雨の音ではない
  打たれた木
  打たれた花
  打たれた道
  天を仰いで打たれた者たちの顔が
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