愛の詩人・上手宰と「冊」の詩人からの伝言/服部 剛
 

の中で、詩人は遠い記憶を手繰り寄せるよう
に語りかける。 


  いや
  ただ一日
  陽の射した朝はあったのかもしれない
  雲が切れ
  さしのべた掌にこぼれたものは
  あれは
  光ではなかったか

  眼を閉じていたように思う
  まぶたの裏までが
  眩しかったように思う
  地上に光のあった日
  あの日の記憶に手をかざして
  雨の中ふたたび歩いてきた
  奇蹟を待つことの愚かさも
  歳の数ほどは知りながら   


 そして、最後の二連に、渋谷卓男さんとい
う詩人の密かな願いが込められていると思う
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