陽炎/柊 恵
なる夢を見てさ」
「夢は夢よ。あなたはいつも、そういう事を気にし過ぎ。
トースト冷めちゃうよ」
「……うん、行ってきます」
晴れないのは気分だけではなかった。
玄関を出ると外は濃霧だった。
「うゎっヤバい。これは電車遅れるな」
駐車場の影、霧の中から小さな人影が現れた。
白く光って見える。
「おはようございます!」
こちらに気づいて、元気よく挨拶する。
「おはよう。元気いいね。紅実のお友達かい?」
「はい、小林です。朝、一緒に行く約束したんです」
中学生にしてはヤケに小さい。
「…どこかで会ったかな?」
「あたしも…初めてな感じがし
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