魔法使い/ふるる
 
わ。」
娘の差し出す薔薇の枝を、母親は悲しそうに受け取った。
 母親が帰ってしまうと、娘は、咲きそろった薔薇の花束を抱えて魔法使いの所へ戻った。出入り口で、魔法使いと鉢合わせになった。
「ねえ、今日は綺麗に咲かせたと思いませんか?お師匠様。」
娘はいつものように屈託なく、瑞々しい薔薇を掲げながら修行の成果を報告した。すると何があったのか、魔法使いは慌てたように娘と薔薇から目を逸らすと、無言でどこかへ出かけて行ってしまった。
 あくる日、娘が食卓にいつものように、黒パンや山羊の乳やはちみつ、木の実、卵料理、薬草のお茶などの食事を用意していると、魔法使いが現れた。顔には獣の皮で作ったような奇
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