魔法使い/ふるる
 
な奇妙な仮面を被り、服はぶ厚い羊毛で作っているようだったが、真っ黒だった。娘は驚いて、仮面を見た。その奥にある、魔法使いの瞳も。それは相変わらず、月のない夜の、静かな闇だった。だが、もっと奥に、小さな星がかすかに、しかし力強くまたたいていた。
娘は驚いてお茶のポットを落としそうになったが気を取り直し、食事の用意の続きをするふりをしてそっとその場を離れた。そしてはやる胸を押さえて書庫へ向かった。たしか、あの本の、あのページにあったはず。そこには、こう書かれていたはずだ。

「魔法使いが恋をした時の注意:
どんなに年老いた魔法使いであっても、恋をすると、ふさわしい年齢にまで身体が若返ってしまう。
気づかれてはならない場合は、魔術を施した仮面や衣で隠すこと。
最も気をつけなければならないのは、瞳の奥の星である。その星を隠すことは、非常に難しい・・・・・」
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