魔法使い/ふるる
 
明さがあった。ある初夏の日、娘がいつものように魔法使いの家で働いていると、母親がやって来た。
「お前、いつまでもこんなところで花嫁修業してないで、そろそろいいお婿さんを見つけて結婚しなければいけないよ。」
娘が自分たちの子にしては見栄えが良く、聡明であるのに気づいた両親は、なるべく金持ちの所へ嫁がせるべきだと、話し合って来たのだ。
「だめよ、母さん。」
娘は薔薇の蕾に触れながら言った。
「私は魔法使いさんが好きなんだもの。それに。」
娘の白い指が薔薇の蕾を包み込んだ。すると、薔薇はくるくると花びらをほどき、見事な大輪となって咲いた。
「私はもう、魔法使い。人間のところには嫁げないわ。
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