孤独/ふくだわらまんじゅうろう
そ彼女は本当に孤独だった
孤独だけが彼女と共にあった
そんな彼女を愛する一人の男がいた
彼には彼女の孤独がわかった
それがどんな色でどんな形をして
どんな手触りなのかがわかるのだった
そして彼は何をしただろう
彼女の部屋をバラの花で埋め尽くしたのか
彼女の窓辺にギターを抱えて愛の歌を囁いたのか
彼女を野に連れ出し太陽の下、飛ぶ鳥や遊ぶ獣たちと命の踊りを踊ってやったのか
違う
彼は彼女の心の血袋に
よく研いだナイフを刺し込んだ
ゆっくりと
やさしく
血袋は、すうっと静かに裂け
美しく赤い血が溢れ出た
彼女の心の中には赤い
血の海が広がっていった
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