アルハンブラ、上空二百メートル、風力ゼロ/ふくだわらまんじゅうろう
 
回しても回しても君の心には繋がらない
ロケットで百四十四光年の隔たりがそこにある
誰かが何処かで勝手に「光あれ」なんて叫ぶ
ぼくはキッチンで墓石のブルースを口ずさむ
ペンだこから血が吹き出るまで絵葉書を書く
この木陰にアブサンの一杯、二杯
だけど君はぼくの左腕を強く抓る
君はぼくのこと好きじゃなかったし
ぼくは君のこと好きじゃなかった
だからこそその六畳一間の宇宙にふたり
世界地図を一跨ぎするような急降下
ニガヨモギに一発、がつん、と殴られたような
陰毛の生い茂る湖畔に迷い込むような
ワープ寸前に計器類のすべてが故障した宇宙船のような
音の壁を!
光の壁を!
時間の
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