アルハンブラ、上空二百メートル、風力ゼロ/ふくだわらまんじゅうろう
 
間の壁を!
過去と未来をカフェ・オ・レのように!
毎朝の三日月パンと!
約束のキッスと!
濡れた睫毛と!
汐の香りの思い出よ!
涙!涙!涙!
コンパスで計ればほんの数ミクロンの隔たりが!
何億光年の誤解の海、いくつも越えて!
叫!叫!叫!
ぼくらはどこから来たのか!
ぼくらはどこへ行こうとしてるのか!
人生という名の六畳一間の宇宙に飛び込んで!
土曜日の夜の光の海に溺れて!
ぼくは何度も何度も何度も君に絵葉書を出したさ!
君はぼくを盆踊りに誘った!
真夜中のヴィデオテープは擦り切れた!
朝が!
朝が!
朝がいつの間にこの部屋の熱気と倦怠を真っ二つにして!
(ためいき)

出そうになるよ
あの頃を思い出して
もうその曲とめてくれよ
世の中がそんなに平和だったなんて
誰も思っちゃいないんだから
いつも誰かが何処かで泣いていた
その涙をすべて掻き集めて
高い高い塔の上で

だけどぼくにできることと言ったら
この薄暗いバルのカウンターの
端っこで生ビールを一杯注文することくらい






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