貸金庫/ふくだわらまんじゅうろう
あるだろうか
私は敢えて断言するのだが
(それはこんな時勢であればこそ、なおさらに)
本当に「何もない」ということの、その存在
否、不在というべきその存在
存在ですらないからこそのその存在
存在の不在であり、不在という存在の
そこに隠された、また隠されようのない力だ
力さえも持たない力だ
無限の無ゆえに無限の力を生む力だ
まるでその貸金庫の鍵穴のように
我々の内に秘めたる鍵を誘い
要求し
愛し
尊敬し
選択する
そうしてこの宇宙の広がりまでも創造してしまった
まるでその貸金庫の鍵穴のように
真の無だけが知っている神の言葉を
否、その神の言葉さえも飲み込んでしま
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)