スチュワーデス・ケイコ/たもつ
 

確かにメダルの色は銀より金がいいに決まってる
けれどそれこそが元凶であるということを
俺は嫌というほど知っているつもりだし現に知っているつもりだ
いずれにせよ、ケイコにとってそんなのは重要ではない
鉛筆と紙をよこし、とりあえず好きなことを書いてください、とケイコは言う
俺に書きたいことなどあるものか
「好きなことを書けばいいの」
彼女の忠告どおり俺は今までの半生を書き始めた
二十二歳の夏、近所の草むらでの出来事にさしかかったあたりで
「死」という言葉を使わずに書いてください、ケイコが言う
冗談じゃない、ここまできてそれはないだろう
猛烈に抗議をするとケイコは悲しそうな顔
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