スチュワーデス・ケイコ/たもつ
 


スチュワーデスさん、とスチュワーデスに声をかけると
私にはケイコという名前があるんです、とそっぽを向かれる
今度こそ間違いの無いように、ケイコさん、と呼ぶのだが
ケイコは押し黙ってしまう
「ケイコさんの実家は浜松で煎餅屋をやってるの」
彼女が耳元で囁く
何でそんなことを知ってるのだ?
「情報化社会よ」
そう言う彼女はこれから会いに行く俺の両親の職業も知りはしない
俺はただ単に機内サービスのアイスコーヒーが欲しいだけなのに
他の人のトレーにはオレンジジュースばかり並んでいる
「何を頼んでもいいのよ」
彼女がまた耳元で囁く
そういう問題じゃないだろうと思うのだ、俺は
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