母校の先生に贈る手紙 /服部 剛
 
はっきりとした記憶は無いのだが、卒業し
て五〜六年後であろうか、高校を卒業して詩
を書き始めていた僕は一度、手紙に同封して
六年二組のことを書いた、とても詩とは呼べ
ない拙い散文を贈ったことがある。それは、
陽の暮れた放課後の、無人の教室でO先生は
一人教卓に立ち、卒業していった一人ひとり
の教え子達の面影を浮かべているという情景
を描いたものであり、もう一つその散文に描
いた印象的な想い出は、卒業後間もないクラ
ス会で、レストランの階段を上がる時、車椅
子のA君を皆の手で運んだ場面である。 

 不思議なもので、O先生が三十八年間の教
員生活が最後となる今日という日に
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