文法について/パンの愛人
ある。ただ「その日本語で暮らしている日本人たちに向けて発せられる批判の根拠にはなりえないんだがなあ」という批判の根拠が薄弱であることに間違いはないと思う。「万人の論理で個人を縛る」ことを憂うからといって、それがすなわち、個人の恣意で万人の論理を破っていいということにはならない。
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言葉の乱れは、ある程度の教養を積めば、おのずと減少してゆくものであると思う。教養がないから、自分の誤謬があたかも内的な欲求であるかのように錯誤してしまうのではないか。幅広い表現法を体得していれば、初歩的な文法の間違いなどそもそも想起すらしないかもしれない。それをあたかもみずからの意図的な選択であると抗弁す
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