短歌と文法、詩と文法/非在の虹
 
は多く、この新たな語法(過ぎシ日の歌、選ばれシ勇者)を使っている。もちろん俳人も使っている。
制限された語数のなかで、的確な単語を的確に伝え、なおかつ、その音楽性を豊かにするためである。
さてこれが僕の誤謬とされた一首である。

(A)岩盤に神の指もて刻まれし銀の跡ありかたつむりの栖(す)   

(B)岩盤に神の指もて刻まれたる銀の跡ありかたつむりの栖(す)

「刻まれし」を「刻まれたる」にするのが、本来の文法である。(B )が正しいのかもしれない。しかしそれは文法的事実であって、詩の真実では、ない。しかも、いかがだろうか、その人が少なくとも一首の「調べ」に関しては、頓着がないこ
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