教育について/パンの愛人
 
換えれば、100パーセント正しいことは、本に書いてあるから教える必要がない」という。いくら数年前から出版業者の不況が噂されているとはいえ、日本は世界と比較してみても活字のあふれた国である。しかし、それでもなお、なにが100パーセント正しいことであるか、いっこうにコンセンサスが得られないのであってみれば、これは皮肉な現象であるとしか言いようがない。

 といっても、私はけっして皮肉が言いたいわけではなくて、ここでは教育における正しさとは何かを考えてみたいのである。

 渡邊氏の論では、教育の現場に登場するのは二人の人物、つまり教える側の人間と教えられる側の人間である。こういった抽象化された二
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