無関心について/パンの愛人
 
と私は思う。これは理想論だから、あくまで理想にすぎないし、ひとによってはその理想が甘いものであると感じるかもしれない。

 いずれにしろ、私は事実に固執する。抽象的な概念思考を敵視するわけではないが、それはつねに事実からの批判にさらされてこそ、はじめて意義のあるものだと考える。
 となれば、当然のことながら、私は嘘を拒絶する。しかし、こういう私の考えもまた甘いとひとは言うかもしれない。嘘と真実を見極める公正な視点などというものが、そもそも幻想の産物ではないのか、と。ひとは見えるものしか見ないし、のみならず、見たいものしか見ないものである。だが、私のいう事実とは、もっと非情で冷厳な性質のもので
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