無関心について/パンの愛人
 
る。私だってそれを認めないわけではないが、だからといってそれらのすべてにかかわっていられるほど、私も暇ではない。それに、なにも性急なアクションを示さなくとも、それがそのまま社会悪の放置につながるわけではないと思う。

 もし本当の正義というものがあるのなら、それはおそらくあらゆる悪を見逃すことができないものであるだろう。しかし、程度の差はあれ、悪は人間の所与条件のはずである。したがって、ひとつの悪を見つけたならば、かれの思考はそこから無限の連鎖をひきおこさずにはいられないことになる。すくなくとも社会とはそのように個々人の無限の連鎖で成り立っているものだからである。となれば、そこでかれの思考は停
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