生きていることのめぐりを感じる詩集 続 安藤元雄詩集/イダヅカマコト
というべきか 乾いた素早いまなざしで
ちらりとおれを見やってから
右の方へ もうとっくに心を決めてしまった足を向けて
一ブロック先にきらめいているデパートのほうへとそれて行く
だがあのデパートの後ろは煤ぼけた運河で
岸辺には赤煉瓦の屎尿器科の病院がある
夏にはその塀ごしにひまわりが咲き
その先には何もない石畳がある
彼女のコートもカドミウム・グリーンだ
運河の黒い水には良く似合うだろう
一刷毛の緑 カドミウム・グリーン
ありふれた草むらの色であってはならぬ
軍楽隊が行き 踊り子の群れが過ぎ
敷石を踏み鳴らし次々と山車がやって来る
赤と黄と白とが舞う
ホザンナ
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