むしろ現代のはらわたとして/大村 浩一
が急速に広がるにつれて、それまでの詩の主題
の選択や表現方法では、現実に対するリアリティを維持できないという事態が出
現してきた。70年代に既に言われていた詩の煮詰まり状態というヤツだ。
マジメに戦後世界の問題や、あるいは日常生活や文学の中の美を描いてみせて
も、それは過去の憧憬でしかない。一般には日常生活のテレビやマスメディアが
見せる多様な豊かさや享楽的なバカ騒ぎのほうが、親しみもあるし刺激的で面白
い。現実のほうが詩的想像力を追い越してしまったわけだ。
ところがその一方で(こちらのほうがより重要だ)、肥大する経済マシーンの
中で現代人はより孤立させられ、消費世界に飲み
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