二千九年、LOVE/捨て彦
 
併しながら作りは割と丁寧な代物であるが、だからと云ッてこのような物にまで権利を主張する者が居ないのは、この橋下近くの死角と成ッた立地の良さからか、ハタマタこの平屋の存在を知ッていて見て見ぬ振りを決めてくれる足長の存在か、不法占拠している伊藤らにはついに知る由も無かッたが、兎に角此の平屋が依然立地している事は彼らにとって只只幸運であッた。
「電球は無いのかね」
Tableの真上に一つぶら下がッている裸電球を眺めながら伊藤が云った。
「あァ、デンキューを買うの、忘れたネ。」
サキイカを噛み千切りながらナンシイも電球を眺める。
「芙蓉に頼んでおけば良かッた」
「今から頼んだら好いぢゃないか」
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