博士の愛した異常な数式/影山影司
きつける雪にも、降り積もる雪にも折れることなく耐えるのだ。木材の下、壁面の中には血流を模した温熱粘液が駆け巡り、室内の温度を調節してくれる。本当のところ、暖炉は要らないのだが博士が雰囲気のためにあしらえたのだと言う。
博士は見かけこそ凡百の平均的な身なりをしているが内面は非常に繊細かつ独創性に溢れる人柄だ。食欲性欲睡眠欲、全て押しなべて団栗の背並べ程度のものしか持っていない。だが凡人のそれらを足して二倍にしても追いつけない程、研究欲だけは旺盛だ。(専門分野が無い万能研究者と評される程に)
発明、発見、発祥。彼は『発』の字が良く似合う。もっとも、秘密を紐解いてしまったら後のことにまったく
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