蛇/壮佑
 
旅立った家族の行く末を案じ
ているのかも知れない。もしかしたら、この駅の地下
は蛇の巣だらけなんじゃないか? 蝮や青大将がとぐ
ろを巻き、山楝蛇や縞蛇やハブが這い回る、蛇の王国
が広がっているんじゃないか? 外来種のでかい奴も
のたくっている? 在来線の列車がホームに入って来
る音が想像をかき消す。背後を若い男女の笑い声が走
り過ぎて行く。小さな頭が僅かに動いたように見えた。

(蛇の子供は進み始める。生まれ育った場所に別れを
告げ、駅前広場を這って行った遥か先には、迷路のよ
うな街が広がっている。それは蛇の子供にとって、穴
や溝や亀裂やいろんな質感を備えた凹凸の連続だ。ア
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