蛇/壮佑
。ア
スファルトやコンクリートばかりじゃない。土や草や
樹や水場もある。餌になる虫にも困らない。そんな格
好の遊び場を横目にしながら、蛇の子供は進んで行く。
漠然とした予感を胸に抱きながら、街の中心部を抜け、
海岸べりの家と家の間の、暗い排水溝の縁を這って行
くと、ふいに視野が開けて、蛇の子供はいっぱいの光
に包まれる。目の前には真っ青な海が広がっている。
すると飛び魚のような胸ビレが左右に生えて、蛇の子
供は海へ、海の沖へと飛んで行く。)
駅構内のうどん屋で昼食を済ませた。職場への帰り
にまだいたら駅員に告げようと思ったが、そこにもう
蛇の姿は無かった。
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