非在のかたち/岡部淳太郎
外側だとか、そんなものではなく、この世界のまだ見えない誰にも発見されていない場所なのだ。僕たちは呼びかけながら、自らの非在をひとつのかたちにした言葉を柔らかいものや硬いものへと変えていく。僕たちはかたちを持ちえない弱い者で、自らの傷に拘っているだけの愚鈍な者でしかないのかもしれないが、自らの不幸や恩寵に脅えているのではない。僕たちが呼びかけたぎりぎりの声は、やがて水平線を越え、地平線を越え、大気圏でさえも突きぬけるかもしれない。そしてそこで、僕たちの声は息絶えるかもしれない。あるいは出来損ないの紙飛行機のように、喉から放たれた瞬間に墜落して、庭先で朽ち果てるだけかもしれない。そんな未来のことを気に
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