非在のかたち/岡部淳太郎
 
を持たない。あったはずのかたちも失ってしまう。そして、僕たちの影はますます薄くなる。遠い宇宙の深淵からやって来た者のように、僕たちは影を持たない。僕たちの影を踏もうとする者は、誰もいない。誰もが僕たちに気づかずに通り過ぎていく。誰もが情けを持たず、誰からも頼りにされず、誰からの便りも届かない。そこで僕たちは、自らの非在そのものをひとつのかたちにまで昇華させようとする。そのための言葉。そのための当てのない呼びかけ。
 こんにちは。
 こんにちは。
 これはもはや、答を期待した呼びかけではない。僕たちのそれぞれの非在が、言葉のかたちに結晶した姿なのだ。僕たちが呼びかけるのは、自分の内側だとか外側
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