非在のかたち/岡部淳太郎
 
たちはかたちを持たない。人々が行き交うこの場所で、自らを立脚させるためのかたちを持たない。僕たちはただの情けない人でしかなく、周囲のものがみなすべて、自分よりも高い場所にあるように感じ、そのために無力感に苛まれている。僕たちは一寸の虫であり、それゆえにより強い魂を保持しようと願うが、結局自らの外側にあるものたちとの比較で得るものは、自らがここに在ることを証し立てることが出来ないということだけだ。僕たちはここに在る者ではなく、ここに在りながら在らざる者として存在している。それは不在というよりも非在であり、ここに在らずという否定の中でしか自分を認識することが出来ないのだ。そのために、僕たちはかたちを持
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