非在のかたち/岡部淳太郎
にも僕たちのことはわからず、それが僕たちにとっての限りない不安をつくり出しているからだ。自分のことすらよくわからない。それが人間というものであり、だからこそ僕たちは自らを知ろうとする。それが出来なければ、僕たちに生きる価値はない。それぐらいの気持ちで、僕たちは走査し、探査し、分析しようとする。僕たちが呼びかけるのは、自らの外側に対してだけではない。自らの内側に対しても、僕たちは呼びかける。呼びかける対象が自分自身だからといって、答がすぐに返ってくるとは限らない。いや、むしろ外側に対して呼びかけるよりも答は遅いぐらいだ。それは他者からのとりあえず受け流した答のようなものではなく、よく吟味した上での真
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